『炎:Hono』演出 フィオナ・ミラーインタビュー(英語版はこちら)
Q.仙台を訪れたきっかけは?
フィオナ:
日本各地を訪れましたが、つながりがあり、また、スコットランドに最も似ていると感じたため、仙台に行くことにしました。
2017年にも日本を訪れたのですが、2018年にはブリティッシュ・カウンシルとクリエイティブ・スコットランドから資金を得て、トリッキー・ハットのコアチームと一緒に日本を訪れました。そこで、さまざまな人と出会い、『炎:Hono』のコラボレーションが可能かどうかを確認しました。日本では私たちのような演劇の創り方、考案の仕方はあまり行われていませんが、日本の人たちが私たちのプロジェクトに興味を持つかどうかを知りたかったです。
私たちはあちらこちらを旅して、仙台で演劇企画集団LondonPANDAに会いました。彼らは若く新しいカンパニーです。彼らとウマが合い、うまく一緒にやれると思ったので、このプロジェクトに興味があるかどうか尋ねたところ、彼らは快諾してくれました。
LondonPANDAは、ほかの協力者とともに「PLAY ART!せんだい」という団体を新しく作り、仙台市内でプロジェクトを進めています。すべてが本当に刺激的で胸が踊ります。『炎:Hono』を上演する劇場や仙台市市民文化事業団含め、圧倒的に前向きな反応がありました。このプロジェクトを支援し、前進させるすべてのパートナーシップに驚いています。
最後に日本を訪れた2019年10月には、仙台で「インフォメーション・セッション(※1)(以下、セッション)」を行いましたが、わずか2日半ほどの告知で参加者が定員に達しました!
※1:プロジェクトの説明と、参加者と簡単なパフォーマンスのエクササイズを行った
▲仙台でのインフォメーション・セッション(2019.10.28@青葉の風テラス)
Q. 仙台のセッションでは、参加者とどのような手法をたどりましたか?
フィオナ:
スコットランドで行っているのとまったく同じプロセスを踏みました。私たちの手法がいかに容易に取り組めるものであるかを示したいと思います。私たちが思い付いた質問に対して、セッションの参加者は文章を思い付きます。それらは有機的で、難しいことではありません。スコットランドとまったく同じように行い、参加者からは同様の反応がありました。
唯一違う点は、異なる言語で応答がされることです。例えば、私は参加者に、彼らが自分たちの人生で取った「リスク」について尋ねました。彼らが考える「リスク」は何か、彼らが引き受けたい「リスク」は何かという質問です。人生や家族内での紛争など、個人的なことについて話した人もいました。 ある女性は、70代になってからヒップホップダンサーになった経緯について話しました。
とても個人的であることを人々がどのように話すのか、表情やボディーランゲージを通して、多くを読み取ることができました。本当にすばらしくて、このプロジェクトに参加したいと思った人たちに圧倒されました。でも『炎:Hono』に、日本人の参加者は12人しか参加できないんです。セッションに参加した人たちはとても興奮していて、本当にすごかったんですよ!
私たちのパフォーマンスの物語は、パフォーマー自身からもたらされます。彼らが物語の一部を語るときに、私は一緒に簡単なエクササイズを行います。そして全員で、アンサンブルパフォーマンスを創ります。これらのすべてを、とてもすばやく行います。
参加者はこんなふうに言うでしょう。「私にはできるわ!簡単よ!”演じて”と言われないし、難しい質問もされない。言いたいことは何でも言えるし、言いたい時に言えるのよ」
私たちの手法、構造に従い、パフォーマーたちのアイデアや物語は、その構造の中で色付けされます。ジグソーパズルのようなものです。参加者は自分たちを自分たち自身で色付けするんです。
仙台でのセッションは、すばらしい経験でした。それが何から生まれてくるのか、想像もできませんでした。日本人は恥ずかしがり屋で謙虚ですが、自分の人生について話してもいいよと言われると、止められません。セッションの参加者は、すばらしく、寛大でした。彼らは”参加”し、お互いを信頼していました。私たちを信頼し、私を信頼していました。
ここスコットランドでも同じ反応があります。みんな言いたいこと、誰かに聞いてほしいことを持っているんです。みんな人間で、コミュニケーションをとりたいと思っています。ほかの人たちと一緒に在りたいと思っています。それは50歳以上であることの徴候です。実際、みんなそれほど気にしていないかもしれませんが。
日本ではスコットランドよりも多くの社会的制約がありますが、それは文化の違いで、日本の人たちも言いたいことがあり、ほかの人に知ってもらいたいと思っています。試してみたい、彼ら自身のために何か新しいことをしたい、ほかの人たちと一緒にこの運動を作りたいと思っています。それらが私たちの創作過程で起こることです。
仙台で私たちの創作プロセスについて捉え直すことは、私にとって本当に強力でした。セッションでは、何が起こるか想像がつきませんでしたが、結果に興奮しています。
すべての人が、”言いたいこと”を持っています。私たちの手法は、世界のどこにでも持ち込むことができます。私たちが日本で出会った参加者とすべての人たちは、見事に寛大な人々でした。チームに信頼が置かれていて、彼らは自分で何か新しいことをすることができました。
『炎:Hono』のようなパフォーマンスを考案する必要があることは明らかです。今回のセッションは、たった2日半の告知で30人が興味を持ち、締め切らなければならなかったからです!
仙台を訪れた初日には、プレゼンテーションを行い、関係者や興味を持った方にプロジェクトについて説明しました。セッションへの参加を希望していた1人の女性がそこに来ました。その後、セッションにキャンセルがあったので私は彼女を招待したのですが、彼女は参加できる機会を得てとても喜んでくれました。
私にとって、実際に日本に足を運び、そのような反応をもらうことは力強いことでした。こちらが質問をするまで、何が起こるのかわからないのです。
Q. 今後の『炎:Hono』の上演で、最も楽しみにしていることは何ですか?
フィオナ:
このプロジェクトが走り出し、まっすぐに進むことを本当に楽しみにしています。創作の核にまっすぐに進むことができると思います。ゆっくりと築き上げる必要はありません。
スコットランドから3人のFlames(フレームス)を日本に連れて行きますが、彼らは以前に私たちのプロジェクトに参加したことがあります。なので、私たちの手法がどう機能するかという心配はなく、新しいパフォーマーに安心させることができます。3人のFlamesは、今そのことを理解していないかもしれませんが、最後にすべてが一緒になったとき、理解するでしょう!私はそのことにとても興味があります。
※Flamesは日本語で「炎」。スコットランドでのパフォーマンス名および出演者たちのことを指す
▲スコットランドでの『The Flames』パフォーマンスの様子
日本の文化の豊かさ、そしてパフォーマンスの観点からそれをどのように探求するかにも興味があります。また、スコットランドと日本の両方で、将来のビジョンと高齢化の意味を共有することを楽しみにしています。両国を比較対照することに本当に興味があります。類似点も多くあると思いますが、日本では特定のことについて話さないという文化もあるので、異なる点もあるでしょう。日本で人々がお互いに払う敬意やそっとしておいてほしい度合いは、スコットランドとはまったく異なります。興味深いことに、10月の仙台でのセッションに参加したのは主に女性でしたが、これはスコットランドでも同様です。私たちと非常に異なる文化を持っている場所では、より多くの違いが期待され、魅力的です。
参加者には、本当に人間的なレベルでつながり、それをパフォーマンスにするように求めています。自分以外の誰かのふりをするように求めているのではありません。特に多くの人に順応しなければならないような文化においては、本当にすばらしい機会になると思います。
誰もが声を持ち、誰もが言いたいことを持ち、誰もが見られたいと思っています。程度は人それぞれであるかもしれませんが。文化的な違いがあるかもしれませんが、文化の表面の下では、私たちは皆21世紀に生きています。私たちはすべて人間であり、私は今、人間同士のつながりを作るのにふさわしい時だと思います。文化外交はとても重要で、スコットランドはこれらのつながりを実現できると思います。私たちの文化は広く認知されており、私たちはいく先々で広めています。
※このプロジェクトは、ブリティッシュ・カウンシルとクリエイティブ・スコットランドのパートナーシップにより「英国での日本2019-20」の一環として支援されています。大和日英基金と英国笹川財団もこのプロジェクトを支援しています。